前回、「マイホーム購入に失敗しないための住宅ローン基礎知識」と題して、住宅ローンを借り入れる際の申込要件について見てきましたが、その中に「団体信用生命保険に加入できる方」という項目があったことにお気付きでしょうか？
住宅ローン審査では、収入基準などいくつかの項目について詳細に確認されるのですが、団体信用生命保険に加入できない場合は、そもそも審査のテーブルに載ることもできません。住宅ローンを申し込むためには、団体信用生命保険に加入できる健康状態であることが必須なのです。
今回は、住宅ローン借り入れ可否に大きく影響する『団体信用生命保険』について見ていきましょう。
団体信用生命保険とは
団体信用生命保険（通称「団信」）とは、住宅ローンを借り入れたお客様（債務者）が亡くなる、高度障害状態となってしまうなど、万が一のことが発生した場合に、生命保険会社が住宅ローン残高に相当する保険金を金融機関に支払うことで住宅ローンを完済する制度です。これは、住宅ローンの滞納に伴う、ローン保証会社の代位弁済と異なり、債務自体がなくなります。
※高度障害状態とは、「両眼の視力を全く永久に失う」「言語またはそしゃくの機能を全く永久に失う」「中枢神経系、精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要する」など病気やけがにより身体の一定の機能が重度に低下している状態を指します。
団体信用生命保険は、住宅ローンを融資した金融機関が、団体として保険会社と保険契約を結んでいますので、住宅ローンを借り入れたお客様は、保険会社ではなく金融機関に保険料を支払うことになります。
保険料はローンの金利に含まれており、毎月の支払額と同時に引き落とされることが一般的です。
団体信用生命保険の告知書
住宅ローンを申し込む際には、団体信用生命保険の告知書（健康状態の申告書）を提出することが必須になっています。
具体的には下記のような項目について申告することになります。
- 最近3ヵ月以内に医師の治療（診察・検査・指示・指導を含む）・投薬を受けたことがありますが？
- 過去3年以内に手術を受けたこと、または2週間以上の期間にわたり医師の治療（診察・検査・指示・指導を含む）・投薬を受けたことがありますか？（例：がん、胃潰瘍、心筋こうそく など）
健康診断で要精密検査の指摘を受けている人などは住宅ローンの審査に影響するのかどうかが心配になると思いますが、必ず正確に記入してください。
告知書という形式上、回答内容は自己申告になるのですが、虚偽記載は絶対に止めましょう。後々になって、虚偽記載が発覚すると「告知義務違反」という判断が下され、最悪のケーズでは保険金が一切支払われないこともありえます。
最終的に、保険会社の審査で「謝絶」の回答が返ってくると、残念ながら申し込んだ住宅ローンを借りることはできません。
では、健康状態がすぐれない方は、もうマイホームを手に入れることはできないのでしょうか？
実は、団体信用生命保険の審査に落ちた場合にも、いくつかの対応策がありますのでご安心ください。
健康状態だけで、マイホーム購入を諦める必要はありません。
団体信用生命保険の審査に落ちた時の対応策
団体信用生命保険の審査に落ちたときには、下記の３つの対応策を考えることができますが、どうしても時間がかかってしまいますので、物件探しと並行して住宅ローンの事前審査を進めていくことをお勧めいたします。
「ワイド団信」を利用する
健康上の理由で団体信用生命保険に加入できない方向けに、審査基準の緩やかな「ワイド団信」という保険があります。
ワイド団信を利用する際は借入金利の上乗せが必要ですが、糖尿病や高血圧症などの持病がある方でも審査に通る可能性がありますので、検討する価値は十分あると思います。
引受保険会社の違う金融機関で再審査する
住宅ローンの取り扱い金融機関ごとに、団体信用生命保険の引受保険会社は異なります。
保険会社によって、審査基準が若干異なりますので、「金融機関Aでは団信の審査に落ちたが、金融機関Bでは団信の審査を通過した」ということは、十分に起こり得ます。
複数の金融機関に住宅ローン審査を申し込むこともできるので、時間がある場合は、引受保険会社が異なる金融機関に申し込んでみましょう。
フラット35を利用する
一般的な住宅ローンでは、団体信用生命保険の加入が必須ですが、「フラット35」では任意加入になっています。
団体信用生命保険に加入しない場合は融資実行金利が0.2％下がる措置もあり、最終的にフラット35を利用すれば、健康状態に関わらずマイホーム購入は可能なのです。
ただし、万が一の場合、住宅ローンの債務は残ってしまいますので、別の備えを準備する必要があります。
健康状態でマイホーム購入を諦める必要はありませんが、団体信用生命保険の審査を通過できる健康な時期に住宅ローンを申し込むことができれば、ご自身にあった有利なローン商品を選択することができます。
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